JR3KBUの電子工作のページ バイク用CDIの製作 (2016年4月〜)

XLR125Rというバイクを中古で買ったのですが、どうも調子が良くありません。
走行中、突然ガス欠のような症状が出て、止まってしまいます。
でも10秒ぐらい待って、セルを回すと普通にエンジンは始動して
再び走行できます。
頻度は10分に1回程度ですが、一度起きると、今度は3〜5分後に
また再発するような感じです。

・ガソリンは満タンです。
・エンジンオイルは交換済みで量も正常です。
・ガソリンキャップに詰まりはなく、コックのところからガソリンを排出させても
 順調に排出されます(ガソリンの流れは正常です)。
・キャブレターを分解しましたが、中は綺麗で問題なさそうです。
・エアクリーナも綺麗です。
・インシュレータにキズ・割れ等はありません。
・プラグの焼けは正常のように見えます。
・プラグを外して火花の出具合を観察すると正常なようです。
・雨降りでなく晴天でも症状が出るので高圧のリークではないです。
・セルモータは元気良く回りますのでバッテリーは正常です。

ネットをいろいろ調べてみるとどうやらCDIユニットの劣化のようです。
走っているうちにどこか発熱してくるのでしょうか。CDIユニット全体が
黒い樹脂でモールドされているので確かめようがありませんが。

古いバイク('98頃)なので、新品のCDIユニットは手に入りません。
他車からの流用もできるかもしれませんが、自作してみることにしました。


【テスト回路その1】
CDIの高圧発生、タイミング等、全てマイコンでやろうと思いました。
マイコンはAVR、ATmega168を使います。
マイコン以外の回路は上記のようなものです。

Q2をスイッチングして高圧(250V程度)を発生します。
それを1μ630Vのキャパシタにチャージし、Q3をONし、放電させます。
Q3をONすると、高圧出力をショートさせることになりますから、Q3をONにする時は、
Q1をOFFして、過大な電流がQ3に流れないようにします。ソフトウェアだけでは
心配なので、IC1のANDゲートを使って、フェイルセーフします。


実験風景


これで放電はうまくでき、スパークプラグから火花が飛びましたが、
放電の頻度が上がると、Q2とLが発熱してしまい、うまくありません。
電流測定用のR1が発煙してしまいました。

ここで、高圧発生部の必要電力を考えてみます(最初に考えろよ、って話ですけど)。

CDIは1μFのコンデンサに電荷を溜めて実験しています。
これを5ms毎に点火させると、上記の如く、発煙してしまいました。
最終的には1μFのコンデンサ2個に溜めて放電させる予定なので
コンデンサに溜めるエネルギーは
 U=1/2 × C × V^2 = 1/2 × 2μF × 250V^2 = 62.5mJです。

これを1万2千rpm(=5ms毎)に溜めるので、仕事率は
 P=62.5mJ / 5ms = 12.5J/s = 12.5W
これだけの出力が連続でできる電源が必要です。
(実はXLR125Rは最高出力の時の回転数は9000rpmで、もっと
上まで引っ張っても1万rpmぐらいと思われます)。

250Vだと62.5mAですね。抵抗負荷なら4kΩ。


【テスト回路 その2】
専用の電源ICを使うことにしました。電流制限などいろいろやってると
結局マイコンを使うよりコストがかからない、という判断です。

トロイダルコアではなくてトランスにすることにしました。
単純なインダクタだと昇圧比が高いのでDutyが高くなってしまい効率が悪いです。
また、トランスにするとスイッチング素子(FET)の耐圧を下げることができます。
FETの耐圧を下げると入力容量を下げることができ、
またON抵抗が低いものを選択することができ、効率の向上が望めます。

いいことばかりですが、こういうトランスは市販のものはありませんので、
自分で巻くことになります。最初、これが面倒だったので、単純なトロイダルコアに
単巻きしたもので実験したのです。


大阪日本橋のデジットで買って来たPC40材、EI30のコアを使って手巻きしました。
これで、これで計算値62.5mAより多い74mAで10分間連続で流してみたところ、
どの部品もほとんど発熱することはありませんでした。

出力電圧は
  無負荷時=250.8V
  74mA流した時=246.1V
でした。


これは入力に付けた40mΩの電流検出抵抗の両端の電圧です。
ピークで130mVが生じていますので、ピークの電流は 3.25A です。
図形的に電流が流れている時の面積から、
平均電流はピークの47%ぐらいになり、1.53Aとなります。
入力電圧は14.0Vなので、入力電力は21.4Wです。

出力は、246.1V 74mAなので、出力電力は18.2Wです。
効率は85%と いうことになります。


これは74mA流している時の出力のリップルの様子です。
細いヒゲを除けば1V以下です。
これは仮に出力に10μFの電解コンデンサを付けて測定したものです。
CDI用としては必要以上に綺麗ですね。
もし、別の用途に使うならば、もう少しリップルフィルタに気を遣った方がいいでしょう。