DR650SEに流れるウィンカー(自作)を装着  (2017年6月〜2018年5月)

「流れるウィンカー」は、英語で "Sequential Turn Signal" と言うそうです。
トラックなどに昔から装着されていましたが、最近、車検でも認められるように
なったので、自作してみました。


こんな構成でいきます。

個々のウィンカーにマイコンを搭載します。マイコンは全部で5個使うことになります。
ウィンカーは、コントローラのコマンドを受信して、その通りの動作をします。
ウィンカーとコントローラは、RS-422の平衡信号線と電源線の合計4線で接続されます。
電源線には最大で0.4A程度しか流れないので、細い線で充分です。

非同期通信は、送信側と受信側のマイコンのクロックがマイコン内蔵のCR発振に
よるものなので、ボーレートを厳密に決めることができません(一応8MHzで発振しますが
マイコン毎にバラつきますし、温度などでも変わります)。

そこで、送信するデータのLSBを必ずHighとして、スタートビットの長さを受信側で
測定することで送信側のボーレートを測定、受信側でボーレートを可変して送信側と
同期を取ることにしました。

コントローラからは3本の状態表示用の信号が出力されます(オープンコレクタ出力)。
入力と出力が3本ずつ同じに見えますが、ウィンカーがONの状態でハザードONに
なればハザード動作します(ハザード動作が優先します)し、ハザードSWはオルタネート式
ではなくモーメンタリ式のSWにするのです。DRにはハザードSWが付いていないので
別途防水タイプのSWを増設する予定なのですが、オルタネート式の防水SWはロック機能を
設けるためか外形が大きくなるので、モーメンタリ式にした方が好都合です。価格も安いです。

そういうわけで、入力と出力はコントローラ側で優先順位を付けて動作が異なる
場合があるので、コントローラから別途出力することにします。


試作・実験回路です。上側にウィンカー4回路、下側がコントローラです。
全部でマイコンが5個載っています。
RS422インターフェースは無く、マイコン同士を直結しています。


いつものように、ALLアセンブラでソフトを書きました。
ウィンカー側がちょうど600バイト、コントローラ側が814バイトと
コンパクトなプログラムです。

アセンブラで書くとコンパクトになるのでうっとりします(変態チックですね〜)。


うまく動作するようになりましたので、基板化します。
DR650のウィンカーボディにすっぽり収まるような形の基板を作りました。
これは裏側(光らない面)です。


この面が光ります。
光を反射するようにレジストは白色にしました。
全面にLEDが付きます。あと、安全のためFUSEを1列毎に入れてあります。
テールランプのLED化とほぼ同じ回路ですが、ウィンカーボディの形状のため、
左端の列だけLEDが3個になっています(他の3列は4個)。
全部で15個のLEDが付きます。


部品実装前に、試しに仮止めしてみました。
ぴったりの大きさです。


部品を実装したところです。

U3がマイコン(ATTiny25)です。

U1がRS-422のレシーバです。
R1(120Ω)で終端しています。
この抵抗は0.1Wぐらい喰うので3216サイズ(3.2mm×1.6mm)なのですが、
基板設計時にミスって2012サイズ(2.0mm×1.2mm)でパターンを作ってしまいました。
実際の部品の方が大きくハンダが片側にしかできないので
片側は直接レシーバICの足にジャンパー線で繋いでいます。

それ以外の大半がLEDの定電流ドライブ回路です。


 
こちらが光る面で、LEDを実装してあります。


 
ウィンカーボディとステーを止めてある金具(ラッチ)です。
基板はウィンカーボディとウィンカーレンズの間に挟み込むように
取り付けるので、基板の厚み分、なるべく深く差し込むために加工しました。


 
これは電球をはめこむ金具ですが、ウィンカーのステーの強度を保つために必要です。
出っ張りを削りました。


ウィンカーボディをウィンカーレンズを接続するネジの支柱部分も削ります。
ウィンカーレンズ側のネジの支柱部分も削りました。


こんな感じで電動リューターでガリガリやりました。
電動リューターを買っておいて良かったです。手でやってたら日が暮れるところでした。


ようやく基板がウィンカーボディにはまりました。
前後左右4個のウィンカーボディを加工するのに丸1日かかりました。


これは4個のウィンカーを制御するユニットです。ウィンカーリレーに相当するものですが
リレー」と言うには複雑過ぎるものですので「コントローラ」と言うべきですね。
コネクタだらけです。
基板は70mm×50mmの大きさです。

中央のU1がマイコン(ATTiny441)です。
その左側のU2はRS-422のトランスミッター(4ch)です。
4chありますが、トランスミッターの入力4線は接続されていて
4ch別々にコマンドが送出されるわけではありません。
同時に同じコマンドが4つに分かれて送出されます。
4個のウィンカーユニットは全く同じコマンドを受信します。

ウィンカーが受け取るコマンドは
 1. 1列だけLEDを点灯させる。
 2. 2列のLEDを点灯させる。
 3. 3列のLEDを点灯させる。
 4. 4列のLEDを点灯させる(フル発光)。
 5. LEDを全て消灯させる。
 6. 4列のLEDを20%の光量で点灯させる。
 7. 自己認識させる。
があります。
この7種類のコマンドを4個のウィンカーに送信します。

7種類のコマンドをコントローラから4個のウィンカーに送信することで、
「流れるウィンカー」の動作の他に、
「ハザード動作」「前側2個のウィンカーを車幅灯として動作」 できます。

また、個々のウィンカーユニットが「前の左」・「前の右」・「後ろの左」・「後ろの右」の
どれであるかを認識させる機能があります。
コントローラのコマンドは4個のワインカーに一斉送信しますので、
個々のウィンカーは自分用のコマンドなのか、そうでないかを把握しています。
自分用のコマンドでない時は無視して何もしません。

例えば、左側にウィンカーを出す時は
 1. 「前の左」・「前の右」・「後ろの左」・「後ろの右」 は全消灯しろ
 2. 「前の左」・「後ろの左」の1列を点灯しろ
 3. 「前の左」・「後ろの左」の2列を点灯しろ
 4. 「前の左」・「後ろの左」の3列を点灯しろ
 5. 「前の左」・「後ろの左」の4列を点灯しろ
 6. 2.に戻る
という風にコマンドを出します。

(コマンドは常に4個のウィンカーユニットが受信しています)。


 
これが裏側です。シルク印刷がややボケています。
写真を撮る時に手ブレしたのではありません。 "Made in China"の品質ですね。
5枚で US $5 という安さなのでしょうがないです。
パターンの途切れやショートはなく、実用上の問題はありません。

この面は、ウィンカーSW(Lerf/Right)、ハザードSWの入力回路(3入力)です。
誤動作しないように割と厳重にフィルタリングしています。


コントローラの上下にアクリル板を付けて保護しておきます。
全く防水ではありません。
シート下のCDIユニットの上に両面テープで固定します。
上側のアクリル板は透明にしてみました(白いと基板が見えなくてさびしいので)。


これが新たに作ったハーネスです。


 
こんな感じです。 

点滅の時間はいろいろやってみて、
  項目    時間   
 1〜3列    0.13秒  
 4列  0.2秒
 全消灯  0.26秒 
    合計  0.85秒 

 1分間に70回の周期

が良さそうでした。
これはコントローラ側でコマンド送出後の待ち時間を変えることで変更できます。
4個のウィンカーは、コントローラの指示にただ従うだけです。

全て動いたので、さあ、車体に取り付けましょう。


コントローラはCDIユニットの上に両面テープでくっつけました。


快晴の昼間に点灯させています。
ヘッドライト(H4)と比較しても充分な光量があると思います。


これがリアビュウ。
ウィンカーレンズ・ウィンカーボディはUSA製の社外品です。純正品と互換のあるものです。
ウィンカーレンズは白色半透明にしました。この方が流れる感じがよくわかると思ったのです。


ハザード動作させています。


こちらは、 全消灯→車幅灯→全ON を繰り返してみました。
実はハザードSWを押しながら電源ONすると、デモンストレーションモードに
なるのでした。



2017年の6月頃から設計、基板を作り始め、お盆の頃にはウィンカー部・コントローラ部が
できあがり、さあ、双方を繋いで動作確認のための配線をしようと思ったら、、、
コネクタの圧着がうまくできません。

コントローラはコネクタだらけになるので、コントローラ基板を小さくするために
コネクタのピッチ1mmの超小型のコネクタ(JSTのNSHコネクタ)を採用したのが失敗でした。
ピッチ2mmのコネクタ(JSTのPAコネクタ)に変更し、基板を作り直しました。

そうこうしているうちに秋がやって来て、ツーリングに出かけたり、DR-Z400の
ジェネレータが壊れて修理したりしているうちに冬が来てしまいました。
やっと春が来て、再開しました。
結局、ほぼ1年間の気の長い開発となりました。


【消費電力の計算】

ウィンカー動作時は以下のとおり。

   電流  時間   積分値 
 1列め   0.08A   1.0   0.08
 1・2列め   0.16A  1.0  0.16
 1・2・3列目   0.24A  1.0  0.24
 1・2・3・4列め   0.30A  1.5  0.45
  全OFF  0.00A  2.0   0.00
            合 計   6.5  0.92 

平均すると 0.142A 
14Vで1.98W、2灯で4W程度。

ノーマルだと21Wのランプが2灯、DUTY=50% として、21W

1/5程度になりました。


車幅灯として動作時

4列動作 0.3A で、DUTY=20%なので 0.06A。
14Vで0.84W 2灯で1.7W程度。
テールランプもLED化していて、0.9W
合計で、2.6W

ノーマルのテールルランプは5W

約半分で済んでいます。


このウィンカーでユーザー車検を受けましたが、何の指摘もありませんでした。
【2018年9月27日 追記】